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1.会うことが好意への第一歩

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•遠距離の影響

友達の名前を思い出してください

 ちょっと中学時代、高校時代の友達を思い出してみてください。できるだけたくさんの人を思い出してください なつかしい顔が浮かんでくると思います。最初は、なかなか思い出せないかも知れませんが、数人思い出すとあとは いもづる式にどんどん増えていくと思います。数が多くなるようでしたらメモを取ってください。

 さて、名前を思い出すとある共通点が出てくると思います。友達の苗字の頭文字に注目してください。 友達の名前を五十音別にすると、おそらく、かなりの偏りがでてくると思います。
もちろん日本人の苗字 として多い鈴木、佐藤、渡辺などがでてくると思います。それとは別に自分の苗字の頭文字の音に近い人が 多くありませんか?そう思ってメモをもう一度見てみてください。

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•人数比の効果

モテモテの理系女性

 恋人が生まれるには、所属している職場や学校の男女の人数比も大きな要因となります。 小さな女の子に「将来の夢は?」と聞くと大抵幼稚園の先生や保育園の先生といった答えが返ってくるでしょう。 女子学生にとっても、可愛い子供の世話をする仕事は魅力的なようで、子供の数が減り、幼稚園が倒産している、 といった現状でも保母志望の学生が多いのです。そんな中で、念願かなって保母になった人は幸せといえるでしょう。
 しかし、就職して2、3年すると突然、保母という職業の落とし穴に気づきます。保母が結婚を考えたとき、周囲に、 適齢期の男性が居ないことです。周囲にいるのは、小さな子供と、その母親だけです。たまにイケメンのいい男が幼稚園に来たとしても それは子供の父親、既婚者なのです。日常生活上、独身男性に会うチャンスがほとんどないのです。人数比効果から考えて、恋人を 得るチャンスはかなり制限されてしまいます。

 同じようなケースが男性の場合もあります。男の子は機械や電気、コンピューターが好きです。 ドラクエやFFに対する男の熱狂振りを見て女はなんであんなに騒ぐのかわからない、と冷めた反応です。 さて、機械好き、理科好きの男の子が進学するのは大学の理工系です。数学が出来ないと入れないこの学部は、入学すると単に 理科系がすき、というだけではなく、頭がよい、という評価も受けて、受験戦争の勝者と評価されます。 やがて、理科系で学んだ学生は、エンジニアや研究者として巣立っていきます。
 しかし、仕事や研究に追われている理科系の出身者が、はたと結婚を考えたとき、周囲に適齢期の女性が見当たらないのです。 日常的に出会う女性がいないのです。女の子はあまり機械が好きではないので職場にはほとんどいません。

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•職場の男女比の影響

パソコンで見つけた彼です

「私東京女子大学に受かったの。で、考えたの、勉強するなら東女、結婚相手を探すなら慶応 。そしてね、慶応を選んだの。やっぱり将来の安定が大事だから」
  慶応に入学したばかりの女子学生がはっきりとこういったのです。慶応大学の先生方がこれを聞いたらどんな顔を するのか、想像しながら聞いていました。この頭のよい女子学生は、恋人や結婚相手を得る重要なカギは、職場や学校など、 日常的に生活している場所の人数比である、ということをはっきりと意識しているようです。 このように結婚志向がはっきりとしていれば、その方針通りに進むのがいいでしょう。ただ、そう簡単に割り切れない場合や、割り切れない人が多いでしょう。
  社会には前の項で話した保母的状況の職場やエンジニア的状況の職場がたくさんあります。 しかし、自分で選んだ職業や学校を、そう簡単に変えるわけにはいかないでしょう。また、恋人ができにくいからといって、 自分のやりたい仕事を変えることもできないでしょう。

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•帰属錯誤の影響

私は魅力がないのかしら?

 友人は距離で決まる、恋人は人数比により決まる、など、ここまで人間関係を決定する物理的環境を強調してきました。 この点「そんな!」と不満に思った人もいると思います。人と人の関係を心ではなく”距離だ””環境だ”というのは 人の心を軽視している、けしからん、とお叱りを受けるかもしれません。しかし、このような人が気づいてない点に 焦点をあて、本当の原因を明らかにするのが、心理学者の1つの役割です。
たとえば、友人ができないで悩んでいる人がいます。恋人がいない若者がいます。このような若者はたいてい、真面目な 好青年です。しかし、その真面目さゆえに、恋人のいないこについて自分が悪いと思っています。


「私は、魅力がないから人から好かれないんだ」
「自分は、酒も飲めず、冗談もいえず、つまらない人間だから、友人ができないんだ」



 などという男女は、友人、恋人がいないことの原因を自分の性格や身体的特徴にあると考え、悩んでしまいがちなのです。 そうすると、ますます引っ込み思案になってしまいます。自分の性格や身体的特徴はそう簡単に変えられません。そうすると、 誰かに会ったって、また嫌われるに違いないと思うことになります。 そうするとせっかくのチャンスも避けるようになってしまいます。こうして、チャンスを自ら無くせば、当然のことながら、友達も恋人も できなくなってしまうのです。まさに悪循環です。 これは、友達、恋人がいない原因を自分のせいだけにするという間違った考え方にその発端があるのです。自分を反省することはいいのですが、 なんでも自分のせいにするのは、感心できません。というのそれによって行動の幅を狭めてしまいがちだからです。

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•近接のマイナス効果

2階の人を殺したい

近くにいれば好意が生まれる。接近することがポイントだ。と前の項で説明してきました。では、近くにいればいつでも 好意をもたれるのでしょうか。
 最近、部屋の床を板張りにするのが流行っています。以前はじゅうたんやカーペットが中心で、それが高級なイメージを 与えていました。ところが、じゅうたんは家ダニの巣となり、ゼンソクの原因であるおされ、今では敬遠され気味です。それに代わって 板張りが人気を集めてきました。木はナチュラルな感じを与え、自然志向の人たちに歓迎され、衛生面でもプラスです。 ところが、マンションで床の板張りが増え始めたら、まったく違ったトラブルが起こってきました。じゅうたんは 生活音を吸収しますが、板は、むしろ音を大きくします。階下に音が響くので、下の人はうるさくて困ってしまいます。 中には、「わざと音を出しているに違いない」と憎しみを感じてしまうケースがでてくる始末です。 また一戸建てでも、最近の都市のように隣同士が接近していると、冷暖房などの生活音もトラブルの原因になります。 これらの効果は近接の効果に反します。むしろ接近しすぎていることにより好意ではなく嫌悪の感情を持つことを示しています。 近接の逆効果といえるでしょう。

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•プライバシーの重要性

ホテル風学生寮の人気

 大学の学生寮というと一昔前は安かろう、悪かろうで、二人部屋と決まっていたものです。 ところが最近では、この手の学生寮は人気がなく、人が集まらなくなってきています。私の元 いた大学でも、一時は全寮制で、全人教育を目指したこともありましたが、70年代以後は、 寮は敬遠され、逆に空き部屋目立つようになってしまいました。 そこで、大学は寮を近代化し、テレビ、電話等の設備を整えたビジネスホテル形式の一人部屋に 改装しました。すると、費用は高いにもかかわらず入居希望者が多く、関係者はうれしい悲鳴を あげています。設備も好評だったようですが、学生にとって、なんといっても一人部屋で、寮規則などなく 自由に生活できることが、気に入ったようです。

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•パーソナルスペース

二歩近づいて彼氏彼女と話す

母親が、子供の部屋があまりに乱雑なので、親切のつもりで、子供が帰ってくる前に、掃除をすることがあります。 母親としては、きれいになった部屋を見て、子供に喜ばれ、感謝されるのではないか、と期待しています。 ところが、帰ってきて片付いた部屋を見た子供は、むしろ腹立たしげに、こういいます
「ここは私の部屋なんだから、勝手に掃除しないでよ」とか
「掃除はありがたいけど、机の上は片付けないでよ」
残念ながら母親の期待は裏切られます。

 私達は、自分の固有の空間を持っています。そして、その空間内は自分で自由にし、人から邪魔されたくないと思っているのです。 その空間は、自分の意のままに統制していたいと思っています。そこでは誰もが排他的で、専制的で、いわば独裁者なのです。だから、 たとえ親切心からであっても、無断で入り込まれたりしたら、憤りが先に立ってしまうのです。
 この固有空間は一つではなく、私達一人一人の周囲に、みえないけれども幾重にも重なっています。 そしてそれぞれ、独占の程度が異なっているのです。 まず、最もはっきりしている固有の空間は、自分の体です。自分の体を無断で、引っ張られたり、 触られたりしたら、誰でもムッっとするでしょう。混雑した電車の中では、やむをえず前の人を押すことがあります。 たぶん、前の人もわかっているのでしょうが、反射的に後ろを振り向き「キッ」っとした目つきで睨みつけます。 身体的空間を侵害されたときの反射的行動がみられるわけです。体は触れていなくても、自分のすぐ近くに人がいるのは、 何か自由な行動が制限されているようで、あまり良い気分がしません。不快感を感じるのは、このためです。 人は自分の体の延長としての個人的空間をもっています。

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•偶然の接触

また会いましたね

観光旅行や山登りなどをすると、同じような日程で旅行する人がいて、観光スポットや休憩所で 何回となく出会います。周囲の人が知らない人ばかりのところで、同じ顔の人に3、4回顔を会わせただけで 、始めてあった旅行者と違い、親しみを感じるから不思議です。そんなことがきっかけで、一人旅が 二人連れになり、友達になったり、恋人になったりすることも多いことです。 このように、単に何度か顔を会わせただけで、相手の人に親しみを感じ、好意を持つようになることを、 対人心理学では、”単なる接触の効果”といいます。普通、人が会うと、話しをしたり仕事をしたり 遊んだりなど、一緒に活動をし、お互いに言葉や行動をやりとりします。このような接触を相互作用といいます。 それに対して単なる接触とは、そのようなやりとりがなく、ただ単に相手の人を見たということです。 知らない人同士が何回も会い、互いに相互作用すれば、二人は親しくなり好意が生まれることは十分に 考えられますが、単に何回か相手の人を見ただけで、好意を持つようになるというのが、この単なる接触の効果の 重要なポイントです。
 そして、近くで生活していると好意が生じるという近接の効果は、実はこの単なる接触の効果により生じているところがある、 といえます。近くにいると、自然と顔を合わせる機械が多くなります。職場が同じならいやおうなしに、一日何回も顔を 合わせるでしょう。別の会社でも、オフィスが同じビルだと、エレベーターやレストランで顔を合わせる機械も多いでしょう。 近所の人は、用事にでるたびに顔を合わせます。このような単なる接触が、互いの好意に結びつくのです。

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•相互作用効果

付き合えば好きになる

 「このワープロ私を嫌いなのかしら」と、いつもは冷静な事務の女性が独り言を言っていました。解説書を読んでもなかなか 思うように作業が進まず、つい口に出た言葉のようです。ワープロに限らずパソコンやファクシミリなどの最近情報機器は、 機能が複雑で、それに加えて解説書がわかりにくく、困ってしまいます。わかってから読むとなるほどとわかる、といった類の 解説書が多いのです。
 さて、相手はワープロですから、好きも嫌いもないのですが、複雑で応答的な機器を使用していると相手を人間のように思うようになり 、つい付き合っている、という感じがしてきます。すると機器に対しても好き嫌いの感情を持つようになり 「この機械とは相性がいいんだよ」などというようになります。私達は誰かと応答的に付き合うとその相手に感情を持つようになります。 ワープロのような機器に対しても感情を持つのですから、相手が人の場合は当然です。たとえビジネスライクに付き合うといっても、そこに 必ず感情が入ってくるのです。

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•接近の効果

恋人を決めたら引越しをしよう

 現在の在宅事情を反映してか、学生達の間でも、住宅の話題が多いようです。 今は、ワンルームマンション型が人気で、昔の三畳とか四畳半のアパートは、安くても 借り手がいないといった様子です。その費用を出すのは田舎の親ですから、親は大変です。 特に女子学生の場合、親の心配が大きく、その分、無理しても、よい部屋に住まわせようとしているようです。 先日、クラスの女子学生が、住所が変わったので、と新しい住所を知らせにきました。みると 学校の近くからかなり遠いところに引っ越したのです。なんでわざわざ遠いところに、と思いましたが、 よけいなことは聞かず、新住所を受け取っておきました。しばらくして、その謎が解けました。彼女は 付き合っていた彼氏の近くに引っ越したのでした。距離は、その人の気持ちをよく表します。今、彼女の気持ちは、 大学から彼に移っていったのです。二人の間の心理的距離なのです。恋人同士にとって、 距離の要因は重要です。アメリカの調査によると、婚約者の二人の住んでいる距離が離れていればいるほど、 その婚約が破談になる確率が高いという結果がでています。両者の間にはっきりとした比較関係が成り立つというのです。

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•単位形成の効果

強制デートでも楽しい

強制デートという心理学の実験があります。強制といっても、強制収容等の実験よりは、いくぶん楽しげな感じがします。 実験者は、若い学生男女が集まった部屋で、次のように説明します。

「私達は恋愛の発展過程について研究しています。今度の実験では、皆さんにこちらで決めたデートの相手と5週間(あるいは一週間)つきあってもらおうと思います。 その間は他の人とのデートは許されません。参加していただけるでしょうか」

”強制”にもかかわらず学生達は興味を持ち、全員が、参加に同意しました。そこで、一人一人に、具体的な相手の人と、その人と5週間つきあうか一週間つきあうかを知らせました。 その後、「その相手の人が、ある討議に参加しているときのビデオがあるので、それをみるように」といわれます。そのビデオは5人でディスカッションしている内容ですが、一回に一人の人しか 見られないようになっており、学生は自由に自分の好きな人を選んで、モニタリングするように言われます。ビデオを見終わると 、被験者は、決められたデートの相手について、第一印象や好意度について質問を受け実験は終わりました。ビデオをみている間、実験者は、被験者が自分のデート相手をどのくらい長くみているかを調べました。その結果、 一週間つきあうと言われた人よりも、5週間デートするようにいわれた人の方が、自分のデート相手をより多くみていることがわかりました。

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•恋人形成の諸要因

彼好みのタイプじゃなくても大丈夫

学生達に理想のタイプを聞くと色々な答えが返ってきます。男子学生の答えをみますと、その中には 「髪の長い子」「目のぱっちりした女の子」「スタイルのいい娘」など、身体的特徴がかなり多くでてきます。 一方女子学生の答えは、以前は、「優しい人」「男らしい人」など抽象的な表現が多く、身体的な特徴や具体的な要求は抑えられていました。 しかし、最近では、むしろ女子学生の方が、はっきりと身体的、物質的な特徴を恋人の条件として表現します。 身長は175cm以上の人、車を持っている人、髪型の要求などかなり多いのです。このような理想の恋人のタイプを聞くと、理想に合っている人は自信を 深めるかも知れませんが、そうでない人は、参ってしまいます。「私は髪が薄いから、誰からも好かれない」「自分は175cmないから恋人ができないんだ」と 心が沈んでしまいそうになる人も大勢いると思います。 しかし、実は理想のタイプでないからといって、あまりがっかりしたり、失望することはないのです。というのは、そんな理想に合った人は 世の中にそうはいないのです。それだけではなく、実際のカップルは、そんな理想と関係なく、恋をしているからなのです。

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•好意の互恵性(ごけいせい)

告白されると好きになる

「本当は、他に好きな人がいたんですけど、彼から、好きだと告白されたので…」
「いつも誘いを断ってばかりいましたので、一度くらいつきあわないと悪いと思ってつきあったのですが、それをきっかけに好きになってしまいました」
と恋人になったきっかけを説明されるときによく聞きますね。このような話を聞くと、女性は恋愛のプロポーズにおいては受けてであり、 自分の方から言い出しにくい。そこで、男性が主導する形になることが多いと思われがちです。しかし、実際には、女性の方が、積極的に プロポーズするケースが最近では目立っているようです。 女性のプロポーズは本来、女性は受身という考えが男性の方にありますから、その分、思いあやまっての行為ととられ、男性に対して衝撃を与えるのです。 「いやぁ、彼女のほうから言われまして、私も嫌いではなかったので…」「彼女のいちずさに負けましたよ」と頭をかきながら話す男性は少なくないです。 いずれにしてもこれからの例は、男性も女性も、本来は特別な好意を持っていない相手から、好意を示され、愛を告白されると、その人が好きになることを示しています。 この関係を対人心理学では好意の互恵性と読んでます。つまり、人は、自分を好きな人を好きになる、という関係です。好意には、このような互恵性が本当にあるかどうか、 心理学者は実験で確かめています。

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•好意の互恵性の理由

なぜ自分を好きな人が好きか

 なぜ人は、自分が好きな人にも増して、自分を好きな人を好きになるのでしょうか。 それは、人は、誰か他の人から好かれたいという気持ちが非情に強いからです。 「あの人あなたのことが好きらしいよ」といったことを友人から聞かされて、いやな気持ちがする人は いないでしょう。表面上は、軽くうけながしていても、内心では喜びがわき上がってくるのを覚えるでしょう。 その人のことが好きであるかどうかが、その時点では関係ありません。自分が好かれていることが嬉しいのです。

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•職場の好意互恵性

怖い上司の胸の内

 好意を示せば、本当に相手の人は好きになってくれますか。好意の互恵性について説明したあと、 質問されました。いかにも真面目そうな学生が真剣な目でいいますので、私は質問というより、問い詰められてる感じで、 ちょっと返答に困ってしまいました。たぶん最近好きになった女の子、それもまだ片思いの人でもいるのでしょうか。

 確かに、好意には互恵性がありますが、好き嫌いはそれだけで決まるわけではありません。特に恋愛においていろんな制限が入ってきます。 恋愛や結婚の相手は一人ですので、愛情を示されたからといって、全ての人に愛情を返すわけにはいかない。他に恋人がいる人もいます。 そんな場合は、もちろん愛情を返すわけにはいきませんし、返そうともしないでしょう。だから、恋愛の場合、互恵性といっても、相手に 恋人のいないときなど、いくつかの条件がつきます。恋人は多ければ多いほどいい、というわけにはいかないでしょうが、友人は多ければ多いほど いいといえましょう。また、親しい先輩や後輩も多いにこしたことはありません。恋人の輪は広がりませんが、友人の輪は広がります。 その意味で、互恵性の法則は、恋愛関係よりも友人関係や上司ー部下の人間関係に、より広く適用されると考えられます。 最近は職場がOA化し、同じ職場の人間同士でも、なかなか腹をわって話す機会がなく、関係が薄くなってきています。 そのため、「自分は、上司から嫌われているのではないか」と内心不安に悩み、しかもその不安を取り除く機械がなく、うつうつとしているといった 状態のサラリーマンが多いようです。そんなヤングにとっては、上司はすでに大人で同じような不安などもっているとは思えないでしょう。 しかし、その大人もまた同じような悩みを持っています。

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•部下への好意

「トスバッティングやらないか」の一言

元プロ野球選手の門田光博選手は、1988年5月憧れの人、長嶋茂雄氏の通算ホームラン数 を超えました。長嶋を目標にして野球をしてきた門田にとっては、野球人生の最良の日となり、その感激インタビューに 答えていました。 門田独特のゆっくりとしたしゃべりの中で、なぜ長嶋を目標としたのか、そのエピソードを話していました。門田が南海に 入団し、新人だった年、オール日本に選ばれ、長嶋と一緒に試合をしたときのことです。長嶋の方はもう超一流プレイヤーでした。 試合前、長嶋は、「ちょっとトスバッティングやらないか」と門田に声をかけたそうです。 長嶋の方は、たぶん特別の意識はなく、そこに新人がいたので、ちょっと声をかけただけだったと思います。 しかし、門田にとっては、その一言が、強い衝撃となったのです。あの長嶋さんが自分に声をかけてくれた。という感激です。 以来その長嶋を目標に長嶋の打ったホームラン数を目標に、傷を克服し、40過ぎても球界の大ベテランとして活躍しているのです。

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•自己開示と好意

私は今孤独なんです

 アメリカ大陸を西から東へ移動するときは、いくら朝早くでかけても、たちまち夜になってしまいます。 大陸が広く、飛行機でも時間がかかる上に、時差が3時間もあるからです。 シアトルを発つときには、ボストン空港についたら、空港の待合室をゆっくりみて回ろう、と思っていたのですが、時差の上に 飛行機は大幅に遅れ、空港についたら真夜中でした。仕方ない、空港はボストンを発つときゆっくりみよう。と宿にタクシーを とばしました。ところが出発するときもあわただしく、ついにボストン空港の待合室をゆっくりみることができませんでした。なんとも残念でした。 といっても、そこの待合室が特別のものではありません。いずれ、ふつうのロビーに決まっています。では、なぜボストン空港の待合室をそんなにみたかったか、と いうと、この待合室は、対人心理学の自己開示の実験が行なわれた場所だからです。

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•嫌悪の相互性とブーメラン効果

あなたを嫌いな人を好きになれますか

あなたを嫌いな人を好きになれますか、と聞かれたらどう答えますか。大抵の人は、「それはちょっとー…」と言葉をにごすに違いありません。 よほどできた人でも、嫌われているのがわかっている場合、その相手の人に好意をもつことはできないでしょう。また、 「どうも、あの人、私のことを好きでないようだね」というときは、その人は決して相手の人を好きではありません。 これは好意の互恵性の逆で、嫌悪の応報性を示しています。好意の互恵性についての説明ですと、 「ほんとに相手の人に好意を示せば、相手の人は好いてくれるでしょうか」と半信半疑で、好意を示すことが、 骨折り損のくたびれもうけにならないかと、不安の人も少なくないのです。 しかし、反対に嫌悪の応報性について話すと「なるほど、確かに」と納得します。好意や嫌悪という対人的感情が いかに、相互応報的なものか、これらの例でわかると思います、心理学ではこれをリシブロシティと読んでいます。

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•欲求の五段階説

衣食足りて、恋人を求める

 アフリカの大学紹介のテレビ番組を見た小学生の女の子が、 「なぜアフリカに大学なんかつくるの、大学をつくるお金があったら食べ物を買えばいいのに」 と腹を立てていました。アフリカの飢餓状態を知り、難民の、特にお腹の空いた子供にいたく同情し、しかも勉強嫌いのその子は、アフリカの国々は何を 考えているのだろうといいたげです。しかし、たしかに難民一人一人にとっては、大学よりも、今日の一片のパンが欲しいのは事実でしょう。

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•評価欲求の充足

うなずきの効果

 人に話しをしているとき、相手が聞いていなかったりすると、人に評価されたい、敬意を表されたいという尊敬の欲求が 阻止されます。そして、無視され、馬鹿にされたことに腹立たしくなるでしょう。通常の会話だと、 相手に聞く気がなければ、ムッっとして、そこで話しを止め会話は終わるでしょう。これが大教室の授業では そうはいきません。どなって黙らせるか、無視してしゃべるかです。どなる先生もいますが、 となると後味が悪く、血圧にも悪いのでたいての先生はじっと我慢してしゃべり続けます。 そんなとき、一番前で目を輝かせ、自分の言うことにうなずきながら話しを聞いている人は、 同意し、賛意を示していると受け取られ、先生の尊敬欲求は十分に満たされるのです。 先生はうなずきによって自分の話に満足します。そして、そのように自分の話しにうなずき、 尊敬を示してくれる生徒を好かないわけがありません。その学生の評価は高く、可愛く真面目で頭がよいと思います。 たとえうなずいている動作だけで、話しを理解していないとしても。

 うなずくことには、こんなに心理的な効果があるのです。

•話し手の自尊欲求

どうしたら聞き上手になれるか

 人には話し上手と聞き上手の人がいます。そして、たいての人は話し上手よりも聞き上手の方が 好かれます。ですから、人に好かれたいと思ったら聞き上手になることです。

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•聞き手の反応度

聞き上手が話をリードする

聞き上手というと、相手の話を聞いているだけで、自己主張をしないのであまりいい印象を受けないかもしれませんが、 しかし、聞き役がいつも受身的で、主体性をもっていないか、というと、そうでもありません。会話における聞き手は 一見、受身のようですが、思いのほか会話をリードしているのです。もちろん話しをしている方は、自分がしゃべっている から、事態をリードしていると思っています。ですが、実は話し手は聞き手の反応を見ながら話しをしているのです。 つまり、聞き手の反応によって、話しが左右されてしまうのです。 対人心理学にこのことを証明する簡単な実験がアメリカで行なわれました。

 被験者がただ実験者を話しをするだけの実験です。被験者が会話の中の単語で複数形を使用した場合に うなずいたりあいづちをうったりします。複数形を使うたびにうなずかれた被験者は、本人は無意識のうちに 複数形を頻繁に使用するようになっていきました。相手から認められる言葉、評価される言葉を自然と使うようになっていくのです。 そして、そのことがわかると、今度ははっきりと、意識的に使用し、相手の関心を引き、より高い評価を得ようとしました。

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•自己肯定感の充足

フムフム、そうだったんですか

心理療法に非指示的療法という方法があります。別名フムフム療法ともいいます。これは、来談者が来て 悩みを相談した場合その対応法として、これをやりなさい、などといった直接的な指示をしないで 、来談者の話を聞き、「うんうん」とうなずく、という方法をとるのです。 英語ではうんうんとうなずくとき、フムフムといいます。そこでこの方法を フムフム療法と呼んでいます。指示を与えるよりこの方法の方が来談者は回復が早いのです。 それはなぜかというと、人は自分を肯定的に評価されると、自分自身について自信がついて不安が取り除かれます。 うなずきにはそのような効果があります。特に、医者などの信頼している人や尊敬している人にうなずかれ、 認められると自身がわいてきます。自分に自信がもてると、人には本来、自己成長欲求、 自己実現欲求があるから、自ら主体性と自主性によって積極的に行動しようとするのです。 自分の中に元々あるこの成長欲求にもとづいて行動していくのです。そのように成長志向をするなかでは、悩みも不安 も取り除かれ、また、いい解決策も生み出されていきます。他方、もし、自分が批判されたり、欠点を指摘されたりすると、 自信を失い、ますます不安になり、落ち込みが激しくなします。
 治療者から、ああしなさいこうしなさいと次々に指示されると、たとえ、それが適当な指示であっても、自らの主体性は 押さえられることになります。そして受け身になってしまい、自らの成長欲求は発揮できません。

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•自己評価のバランス理論

謙遜に同調はダメ

 人は自分の欠点や短所について、自分ではかなりわかっていてます。だから、ときどき自嘲的に自分の欠点を口に出したりします。 しかし、だからといって、その欠点をハッキリと指摘されると、あまりいい感情をもちません。さらに、その欠点が、当人が最も きにしている点だったりすると、不快感が沸いてきて、言った人に対して嫌悪感をもちかねません。 自嘲的言葉に対しては、不要な同調は禁物です。なぜ謙遜に同調してはいけないのか。

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•称賛の効果

ゴマスリの効果

人をほめると好かれる、同意すれば好意をもたれると前の項で説明しましたが、この話しには反論も多いと思います。 なにしろ、ゴマスリや八方美人など、人をむやみにほめる人は評判が良くないという話しがある。 しかし、この評判の悪いのは、ほめられた本人からではないことを理解することが重要です。 第三者や同僚に評判がよくないだけなのです。第三者には評判が悪くても当事者はとても良い気持ちです。 ゴマスリだけで出世する人もいるぐらいですから。ただし、ほめてばかりいる人、口あたりのいいことだけ言っている人は、実は相手の 人からも、そんなに好かれないのです。 対人心理学の実験でも、ずっとほめっぱなしの人よりも、最初批判を加え後でほめた人の方が好意をもたれるといった結果がでています。 ほめればほめるほどよいのではないか、なぜほめっぱなしが好意をもたれないのでしょうか。その理由は二つあります。

 一つは、どんなことでもほめると、そのほめ言葉やほめることの真実性が薄らいできます。 人は人を喜ばせる手段としてほめるということを皆知っています。だから、どんなことでもほめる人は、 そのほめ言葉を手段として使っているので、真実で自分の能力をほめているのではないと受け取るようになります。 そう思うと、どんなほめ言葉も自尊心や評価欲求を満足させなくなります。単なる手段としてのほめ言葉は、その 底意をさぐられ、好意を生みにくいのです。

 第二の理由は、いつも誰をもほめていますと、その人は人をほめるタイプの人だと思われます。 すると、相手をほめても、ほめられた人は自分をほめられているのではなく性格上ほめているだけだ、と思うことになります。 この場合も自尊心が満足されたり、自分が尊敬されたとうけとれないけです。そして、ほめているひとを、誰でもほめる ゴマスリ屋さんと評価することになります。ほめた人は好意をもたれないのです。

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•優越感情の強度

ほめるのは簡単か

 人をほめることは、簡単そうですが、意外とむずかしいのです。というのは、ほめるというのは相手を評価することですから、 相手に優越感を与え自分が相対的にひき下がることになるからです。 このことは特に、男性にはきついのです。男性は同性の人間関係を優劣関係でとらえる傾向が強く、相手より常に 優位でいたいとする心理傾向を強くもっています。 だから、相手をほめたり、評価しようとすると、自分がへり下ったように感じ、 相対的に劣等感を感じるのです。この心理がほめることを難しくし、ストップをかけるのです。 特にライバルである同僚や自分より目下である部下をほめ、評価することは、心理的に負担が大きいのです。

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•親しい人の評価の仕方

ほめあって、自信をつけて

 周囲から称賛をあび、ステージ上で拍手を迎えられる天才といわれるバイオリニストがしました。 その人が、評価されないと自信がもてない、自信が持続できない、自信がないと良い作品、演奏ができないといっているのです。 ステージの拍手とは別に、親しい人からの直接のほめ言葉が、いかに評価欲求を満たし、不安を消し、自己成長、自己実現に自分を向ける 原動力になるか、わかると思います。
 人は誰でも、自分自身についてあるいは自分のやっていることに対して、それでいいのかどうか不安をもっています。 コンピュータをやっている人の中に時に行き詰まり、「自分は能力がないのではないか」と不安になる人が多くいます。 人は壁にぶつかったり、失敗したりすると、その原因を自分の能力不足、それも生来の無能力や不適応に帰する傾向があります。
 ワイナーという心理学者は、人が成功や失敗をしたとき、その原因をどこにあると考えるかにより、そのとき感じる感情やその後の 対応が異なるとし、その法則を作成しています。これを原因帰属の理論と呼んでいます。そのなかで、ワイナーは失敗の原因を自分の 能力に帰属する、つまり、この失敗の原因は自分の能力不足によるものだと考えると、生来の能力不足はいかんともしがたいので、あきらめや 失望の感情をもち、その原因を努力不足にした場合は、今度はがんばって成功してやろうという意欲がわいてくるというのです。 このように考えると、できるだけ、失敗原因は自分の能力に帰属しない方が成長意欲が育まれることになります。

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